風俗営業の種類を解説!飲食店で気をつけたいポイントも紹介
風俗営業許可申請を行う際、最初に確認しなければならないのは「風俗営業の種類(種別)」です。風営法によると風俗営業には5つの種類があり、それぞれに営業内容の条件や構造上の基準が細かく規定されています。
今回の記事ではそれぞれの特徴や条件・基準を解説するとともに、風俗営業と通常の飲食店、性風俗関連特殊営業との違いについても説明していきます。
風俗営業には5つの種類がある
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の第2条第1項の中では、風俗営業が「1号営業」から「5号営業」までの5つに分類されています。
- 風俗営業1号営業(接待飲食等営業)
- 風俗営業2号営業(低照度飲食店)
- 風俗営業3号営業(区画席飲食店)
- 風俗営業4号営業(マージャン店・パチンコ店)
- 風俗営業5号営業(ゲームセンター)
それぞれの内容は次の通りです。
風俗営業1号営業(接待飲食等営業)
風俗営業1号営業とは、いわゆるキャバレーやスナックなどのことです。風営法の条文(第2条第1項第1号)には「キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」と規定されています。
この中に「料理店」や「カフエー(カフェ)」とありますが、すべての料理店やカフェが風俗営業になるわけではありません。1号営業に該当するかどうかは「客の接待をして」「客に遊興又は飲食をさせる」という部分で判断されます。
まず「接待」ですが、これは条文の別の部分で「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(第2条第3項)とされています。もう少し噛み砕くと、接待とは継続的に客の隣に座って歓談したり、客の相手をすることです。単に料理や飲物を運ぶ、カウンター越しにお酒を提供する、あいさつや世間話を交わすことなどは接待にあてはまりません。
次に「遊興又は飲食」ですが、遊興とは「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」で、具体的には客にカラオケを歌うよう勧めて手拍子をとったり一緒にデュエットをする、客室内でダンスやショーを見せる、客と一緒にゲームをするなどの行為が挙げられます。飲食というのは、お酌をしたり料理を口元まで運んだりすることです。
1号営業の構造上の基準については、次のようになっています。
- 客室の床面積が、和室の場合は1室あたり9.5㎡以上、その他の部屋は1室あたり16.5㎡以上であること(客室が1室のみの場合は、これより小さくても問題ありません)
- 客室内が店舗の外から容易に見通せないこと
- 客室内に見通しを妨げる設備(高さ1m以上のイス、ついたてなど)を設けないこと
- 「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある」写真やポスター、設備などを設けないこと
- 客室の出入口に施錠設備を付けないこと(店舗の外に通じる出入り口を除く)
- 店内の照度が5ルクス以下にならないように維持される構造・設備を設けること
- 騒音や振動が条例で定める数値未満に維持される構造・設備を設けること
風俗営業2号営業(低照度飲食店)
風俗営業2号営業は「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの」(第2条第1項第2号)です。
この「10ルクス」とは、ロウソク程度、もしくは上映前の映画館程度の明るさと言われています。おしゃれな雰囲気のバーなどがこれに該当するでしょう。ただし「接待」を伴う営業の場合は1号営業になりますので、ここは注意が必要です。
「接待」はしなくても、深夜営業などで照明を落としていれば、風営法に抵触する可能性があります。
2号営業の構造上の基準は以下の通りです。
- 客室の床面積が1室あたり5㎡以上(客に遊興させる場合は33㎡以上)であること
- 客室内が店舗の外から容易に見通せないこと
- 客室内に見通しを妨げる設備(高さ1m以上のイス、ついたてなど)を設けないこと
「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある」写真やポスター、設備などを設けないこと - 客室の出入口に施錠設備を付けないこと(店舗の外に通じる出入り口を除く)
- 店内の照度が5ルクス以下にならないように維持される構造・設備を設けること
- 騒音や振動が条例で定める数値未満に維持される構造・設備を設けること
風俗営業3号営業(区画席飲食店)
風俗営業3号営業は「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5五平方メートル以下である客席を設けて営むもの」(第2条第1項第3号)です。
座席が細かく仕切られている飲食店がこれに該当します。具体的には、食事メニューを提供しているネットカフェや漫画喫茶などが挙げられるでしょう。
3号営業の構造上の基準は以下の通りです。
- 客室の床面積が1室あたり5㎡以内であること
- 客室内が店舗の外から容易に見通せないこと
- 「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある」写真やポスター、設備などを設けないこと
- 客室の出入口に施錠設備を付けないこと(店舗の外に通じる出入り口を除く)
- 店内の照度が10ルクス以下にならないように維持される構造・設備を設けること
- 騒音や振動が条例で定める数値未満に維持される構造・設備を設けること
- ダンスができる構造・設備を設けないこと
風俗営業4号営業(マージャン店・パチンコ店)
風俗営業4号営業とは「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」(第2条第1項第4号)のことで、文字通りマージャン店(雀荘)、パチンコ店などが該当します。
4号営業の構造上の基準は以下の通りです。
4号営業全般に適用されるもの
- 客室内に見通しを妨げる設備(高さ1m以上のイス、ついたてなど)を設けないこと
- 「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある」写真やポスター、設備などを設けないこと
- 客室の出入口に施錠設備を付けないこと(店舗の外に通じる出入り口を除く)
- 店内の照度が10ルクス以下にならないように維持される構造・設備を設けること
- 騒音や振動が条例で定める数値未満に維持される構造・設備を設けること
パチンコ店だけに適用されるもの
- 当該営業(パチンコ)で使用する遊技機以外の遊戯設備を設けないこと
- 店内の見やすい場所に商品を提供する設備を設けること
風俗営業5号営業(ゲームセンター)
風俗営業5号営業とは「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗」などで「当該遊技設備により客に遊技をさせる営業」(第2条第1項第5号より一部抜粋)です。
少しわかりにくい条文ですが、具体的にはスロットマシンなどを備えたゲームセンターを想像してみてください。またダーツバーの場合も、ダーツ機器の数や設置状態によっては5号営業にあてはまります。
5号営業の構造上の基準は以下の通りです。
- 客室内に見通しを妨げる設備(高さ1m以上のイス、ついたてなど)を設けないこと
- 「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある」写真やポスター、設備などを設けないこと
- 客室の出入口に施錠設備を付けないこと(店舗の外に通じる出入り口を除く)
- 店内の照度が10ルクス以下にならないように維持される構造・設備を設けること
- 騒音や振動が条例で定める数値未満に維持される構造・設備を設けること
- 遊技料金として紙幣を挿入できる遊技設備や、客に現金や有価証券を提供する遊技設備を設けないこと
風俗営業でよくある疑問・質問
続いて、風俗営業でよくある疑問・質問を紹介していきます。
- 通常の飲食店であれば風俗営業許可は必要ない?
- 性風俗関連特殊営業と風俗営業の違いは?
- 特定遊興飲食店営業と風俗営業1号営業は同じもの?
それぞれ解説していきます。
Q1:通常の飲食店であれば風俗営業許可は必要ない?
「自分が営むのは普通の飲食店だから、風営法は関係ない…」
そのように考える経営者の方は大勢いらっしゃいます。しかし「通常の飲食店」と「風俗営業」を分けているのは、接待の有無や照明の暗さ、遊戯施設の有無などです。経営者の側が「風俗営業ではない」と思っていても、店内の照度が10ルクス以下になれば2号営業、5㎡以内の個室があれば3号営業とみなされる可能性は十分にあります。
普通の飲食店を開業する場合でも、営業方法や設備が風俗営業の基準に当てはまらないかどうか事前に確認することが重要です。
Q2:性風俗関連特殊営業と風俗営業の違いは?
風俗営業=性風俗、と誤解している人は少なくありません。しかしソープランドやファッションヘルスなどの性風俗産業は風営法第2条第5項で「性風俗関連特殊営業」と規定され、風俗営業と区別されています。
風俗営業と性風俗関連特殊営業の主な違いは「性的なサービスを提供するかどうか」ですが、性風俗関連特殊営業では店舗型(ソープランドや個室ビデオ、ラブホテルなど)のほか、デリヘルのような無店舗型も存在するのが特徴です。
なお風俗営業では「営業許可の申請」が必要ですが、性風俗関連特殊営業の場合は「営業開始の届出(許可は必要ない)」をすることとされています。
Q3:特定遊興飲食店営業と風俗営業1号営業は同じもの?
平成28年6月23日に施行された改正風営法では、「特定遊興飲食店営業」という新しい種別が設けられました。ナイトクラブやディスコなどがこれに該当します。
特定遊興飲食店営業と1号営業の主な違いは以下の通りです。
- 午前0時〜午前6時の時間帯に営業しているか(この時間帯に営業すれば特定遊興飲食店営業)
- 接待を伴うか(接待を伴うなら1号営業)
深夜営業をする(特定遊興飲食店営業)場合は接待ができない、接待をする(1号営業)場合は深夜営業ができない、という関係になります。
風俗営業の種類まとめ
今回は5種類の風俗営業の特徴と構造上の基準、通常の飲食店や性風俗関連特殊営業との違い、特定遊興飲食店営業と風俗営業1号営業の関係などについて説明してきました。これから許可申請を行う方は、5種類の風俗営業をしっかり区別できるようにしてください。
なお、どうしても区別がつかない場合や基準などについて不安がある場合は、行政書士に相談するのもおすすめです。専門家を上手に活用しながら、風俗営業許可のスムーズな取得を目指してください。