深夜営業許可が必要なのはどのような場合?申請方法や注意点を解説
深夜の時間帯にアルコールを提供する飲食業を営む場合は、いわゆる「深夜営業許可」の取得が必要になります。とはいえ深夜営業許可は要件が細かく、特に初めて深夜営業を行う人にとっては難しい制度です。
今回の記事では
- 深夜営業許可について
- 深夜営業許可が必要になる条件
- 満たすべき基準や提出書類
- 深夜営業許可に関連した疑問・質問
について詳しく解説していきます。
深夜営業許可とは?
「深夜営業許可」というのは、正確には「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出」という制度です。ちなみに法律上「届出」と「許可」はまったく別の手続きなので、厳密にいうと深夜営業許可という表現は正しくありません。ただし一般に浸透している(多くの人が使っている)言葉ということで、この記事の中でも便宜上「深夜営業許可」と呼んでいきます。
深夜営業許可は、飲食店が文字通り「深夜営業」を行う際に必要となるものです。ただひとくちに「飲食店」といっても、食事や飲み物を提供する店すべてが深夜営業になるわけではありません。また「深夜」の具体的な時間帯についても、風営法の中できちんと定められています。法律違反には罰金も課されますので、まずは「どのような場合に深夜営業許可が必要になるのか?」をしっかり理解しておくことが大切です。
深夜営業許可が必要となる条件
深夜営業許可が必要かどうかは、以下の2つの条件を満たしているかどうかで判断されます。
- 午前0時から午前6時の間に営業を行なっているか
- アルコールを中心に提供する店か
それぞれの条件を解説していきます。
午前0時から午前6時の間に営業を行なっているか
風営法第33条によると、深夜とは「午前0時から午前6時」の時間帯のことです。午前0時を過ぎてから開店する場合はもちろん、前日から営業を継続したまま0時を過ぎる場合も深夜営業となるため注意してください。余談ですが、平成28年の風営法改正まで、深夜の定義は「午前0時から日出時まで」とされていました。
アルコールを中心に提供する店か
警察庁が通達する「風営法の解釈運用基準」では、深夜営業の対象となる飲食店について「バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。)」と規定されています。
この通達の文面にもある通り、深夜営業の代表的な形態は「バー」です。これに対しファミレスや牛丼屋などは、(たとえメニューの中にビールなどがあっても)「通常主食として認められる食事」を提供する店になるため、深夜営業許可は必要ありません。
とはいえどこまでが「アルコール中心」の店になるかは、とても判断の難しい問題です。法律にも厳密な決まりはなく、実務上は警察側の判断となります。もし深夜営業許可が必要かどうか迷ったら、まずは警察署(生活安全課)に相談してみると良いでしょう。
深夜営業をする際の注意点
深夜営業許可を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。加えて、営業形態(どのようなスタイルで営業するか)についても注意が必要です。
ここでは
- 店舗物件の立地
- 店舗設備に関する要件
- 営業開始後の注意点
について説明していきます。
物件の立地
深夜営業ができる「立地」には制限があります。日常生活の中であまり意識することはないものの、実は私たちの住む街は以下のように用途が決められていて、地域ごとに設置できる施設が制限されているのです(これを「用途地域」といいます)。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
これらのうち深夜営業を行うことができないのは「第一種低層住居専用地域」から「準住居地域」までの7つの地域です。「住居専用地域・住居地域では深夜営業ができない」と覚えておくと分かりやすいかもしれません。
ただし、この制限には地域によって若干の例外が設けられています。たとえば神奈川県の場合、「商業地域の周囲30メートル以内の住居地域(準住居地域を含む)」では深夜営業を行うことが可能です(参考:神奈川県警察「風俗営業等の規制概要と営業申請(届出)手続」)
深夜営業許可を取ろうとする際は、まずは「お店の立地が住宅専用地域・住宅地域でないかどうか」、そして「地域独自の制限や例外規定がないかどうか」を確認するようにしましょう。
なお用途地域を確認する方法には、
- 不動産屋に聞く
- インターネットなどで公開されている都市計画図を見る
- 自治体の都市計画課などで地図をもらう(数百円の手数料がかかります)
といったものがあります。地域独自の規定については、管轄する警察署に尋ねてみるのも良いでしょう。
店舗の内装
店舗の内装には、次のような制限があります。
- ①客室の床面積が9.5㎡以上(客室の数が1室のみの場合は制限なし)であること
- ②客室に見通しを妨げる設備がないこと
- ③善良な風俗等を害するおそれのある写真、装飾等の設備がないこと
- ④客室の出入口に施錠の設備がないこと
- ⑤営業所の照度が20ルクス以上であること
- ⑥騒音、振動の数値が条例で定める数値以下であること
このうち②の「見通しを妨げる設備」には、高さ1mを超えるイスやパーテーション、観葉植物なども含まれます。こうした備品がある場合は客室を分けるのもひとつの手段ですが、その場合は①の制限(床面積が9.5㎡以上)にも注意が必要です。
「見通しを妨げる設備」があるかどうかを判断する基準については「客室の任意の場所1箇所から全体を見通すことができればよい」と解釈する地域(東京など)がある一方で、神奈川県のように「客室内のどこからでも見通せることが必要」とされているところもあります。こうした地域ごとの差にも注意が必要でしょう。
禁止事項
深夜営業をする上で守らなければならない注意事項には、さまざまなものがあります。
- 接待をしない
- 午前0時以降は客に遊興させない
- 22時以降に18歳未満の人に接客させない/保護者が同伴しない18歳未満の人をお客として入店させない
- 客引きをしない
それぞれの注意事項をみていきます。
接待をしない
ここでいう「接待」とは、継続的に客の隣に座って歓談したり、客の相手をすることです。たとえば特定の客をカラオケに誘って場を盛り上げたり、隣でお酌をしたり食べ物を口に運んだり、と言ったサービスがこれに当たります。
このような接待をともなう飲食店は「風俗営業」となり、風俗営業許可申請が必要です。深夜営業の飲食店で接待を行うと風営法違反で処罰されるので、十分に注意してください。
午前0時以降は客に遊興させない
「遊興」というのは、歌やダンス、演奏、ショー、ゲームなど、お客を楽しませるサービスです。 (午前0時以降は)お客さんが勝手にカラオケを歌うのは自由ですが、お店の方からお客さんを誘ったり、上記のようなサービスを提供してはいけません。
22時以降に18歳未満の人に接客させない/保護者が同伴しない18歳未満の人をお客として入店させない
これは深夜営業に該当する飲食店だけでなく、22時以降にアルコールを提供する他の飲食店にも該当します。
客引きをしない
深夜営業をする店には「客引き行為」が禁止されています。たとえ直接的な客引きでなくても、公共の場所で立ちふさがったり、つきまとったりすることは許されません。
従業者名簿
深夜営業を行う店は「従業員名簿」を備え付ける必要があります。風営法第36条によると、名簿に記載する内容は「住所及び氏名その他内閣府令で定める事項(性別や生年月日など)」です。
また名簿に合わせて「本人確認書類」も必要とされています。本人確認書類とは、日本人の場合は「生年月日と本籍地の都道府県名が記載された住民票記載事項証明書やパスポート」などです。外国人の場合は「在留カードやパスポート、難民旅行証明書など」です。
深夜営業許可の申請方法
深夜営業許可の申請手順は「飲食店営業許可を取得する」→「深夜営業の営業開始届を提出する」というシンプルなものです。このうち「飲食店営業許可」の申請先は保健所、「深夜営業許可」の届出先は警察署になります。
最初にお話しした通り深夜営業許可は「届出」なので、基本的に申請内容に不備がなければ「受理」されて終わりです。風俗営業許可のような「実査」はなく、許可証のようなものが発行されることもありません。
必要な書類
深夜営業許可(届出)に必要な書類は以下の通りです。
- 営業開始届出書
- 営業の方法を記載した書類
- 営業所の平面図
- 本籍記載の住民票の写し(外国人の場合は国籍等記載の住民票の写し)
- 登記事項証明書と定款(届出者が法人の場合)
- その他(地域別)
それぞれの書類について解説していきます。
営業開始届出書
深夜営業を行う店の概要(店の名前、所在地、建物の構造、客室の数・面積、照明設備、音響設備、防音設備など)を記入します。
営業の方法を記載した書類
お店の営業時間や営業スタイル(飲食物やお酒の提供方法や遊興の内容など)について記入します。
営業所の平面図
店内の配置(イス、テーブル、厨房器具など)、客室部分の面積、店舗全体の面積、照明や音響の設備の配置について記入します。
本籍記載の住民票の写し(外国人の場合は国籍等記載の住民票の写し)
届出者の本籍地(外国人の場合は国籍等)が記載された住民票のコピーを添付します。届出者が法人の場合は役員全員の住民票が必要です。
登記事項証明書と定款(届出者が法人の場合)
届出者が法人の場合は、法務局で取得する「登記事項証明書」と「会社の定款」を添付します。
その他
地域によっては、上記のほかに
- 飲食店営業許可証
- メニューのコピー
- 賃貸借契約書の写し
などが必要になることもあります。具体的にどのような書類が必要かは、管轄する警察署に確認してください。
提出期限
特に「提出期限」というのはありませんが、深夜営業の届出は、受理の10日後から有効になります。深夜営業を開始したい日の10日前までに書類を提出するようにしましょう。
届出場所
深夜営業許可の届出先は、店の所在地を管轄する警察署の「地域安全課」です。特に手数料は発生しませんが、郵送などによる提出はできません。必ず警察署に出向くようにしてください。
行政書士に依頼する際の流れ
ここでは深夜営業許可の手続きを行政書士に依頼した場合の一般的なサービス内容を、業務の流れに沿って列挙します。
- 相談
- ヒアリング
- 必要書類の案内・作成
- 実測調査
- 警察署への事前相談
- 書類の提出
相談
主に依頼前の「問い合わせ」や、深夜営業許可についての簡単な相談です。「初回相談無料」だったり、相談方法が豊富に用意されている(面談、電話、メール、オンライン通話など)場合もあります。
ヒアリング
店舗の内装や工事予定等について詳細にヒアリングし、専門家の視点からアドバイスを行います。
必要書類の案内・作成
お店の所在地に合わせて、届出に必要な書類の案内や作成を行います。
実測調査
店舗図面を作成するために、お店の実測調査を行います。
警察署への事前相談
地域特有の制限や依頼者の店舗の構造などについて、正式な届出の前に警察と相談します。これを行うことで、届出の手続き全体がスムーズになります。
書類の提出
書類の提出代行も行政書士の仕事です(地域によっては申請者本人が警察署に行かなければならないケースもあるので、依頼している行政書士に確認してください)。
深夜営業許可についてよくある質問
ここでは深夜営業許可に関連する疑問・質問について説明します。
- 深夜営業許可と風俗営業許可の違いは?
- 深夜営業許可の届出をしなかったらどうなるの?
それぞれ解説していきます。
深夜営業許可と風俗営業許可の違いは?
深夜営業と風俗営業は、ともに風営法に規定されている営業形態です。ただしそれぞれの内容と「許可」の流れには多少の違いがあります。
まず内容について、深夜営業は「深夜(午前0時から午前6時)営業」が可能です。しかし風俗営業のような「接待」はできません。一方の風俗営業は「接待」を行うことはできますが「深夜営業」はできません。
許可の流れは、深夜営業の場合は(届出を)受理されたら完了で、風俗営業の場合は申請後に実査を受けて、合格する必要があります。
深夜営業許可の届出をしなかったらどうなるの?
深夜営業の届出をしないまま「深夜に」営業を行うと、風営法違反として「50万円以下の罰金」が課される可能性があります。虚偽の申請書や添付書類を提出した場合も同様です。
深夜営業許可についてまとめ
今回は深夜営業許可について、必要な条件や提出書類などについて取り上げました。これから深夜営業の飲食店を開業する方は、ここで説明した内容をぜひ参考にしてみてください。
なお細かい要件や制限は地域によって異なる場合があります。この記事では主に神奈川県の事例で説明しましたが、他の地域の方は地元の警察や行政書士とも相談しながら、深夜営業を行うための物件選びや店舗設計を行うようにしてください。