風俗営業許可に必要な条件は?3つの許可要件について解説
風俗営業を営もうとする者は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)により、風俗営業の種別ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません。風俗営業の種類は次のように分類されています。
- 第1号営業=キャバレー・料理店・社交飲食店
- 第2号営業=低照度飲食店
- 第3号営業=区画席飲食店
- 第4号営業=パチンコ店・マージャン
- 第5号営業=ゲームセンター
今回は風俗営業の許可要件、風俗営業と深夜営業、風俗営業許可申請にかかる費用、必要な書類などについてご紹介していきたいと思います。
風俗営業許可取得に必要な3つの許可要件
条件とは法律行為の効力の発生・消滅を、将来の不確定な事実の成否にかからせる付款のことで、条件のうちどうしてもこれだけは外せないものが要件です。
風俗営業許可習得のうちこれを外せば風俗営業許可が下りないという意味での要件は、以下の3つになります。
- 人的要件:許可申請を図ることができない者
- 場所的要件:用途地域のうち許可されない地域がある
- 構造的要件:施設の設備に備える構造
それぞれについて詳しく解説していきます。
人的要件
以下のいずれに該当する場合は、許可を受けることができません。
ⅰ 成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権をもの得ない者
ⅱ 1年以上の懲役または禁錮の刑に紹介処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
ⅲ 一定の罪を犯して1年未満の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
ⅳ 集団的または常習的暴力的ふ不法行為その他の罪に当たる国家公安委員会が定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
ⅴ アルコール、麻薬、大麻、あへんまたは覚醒剤の中毒者
ⅵ 風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律26条1項により風俗営業の許可を取り消され、当該取り消しの日から起算して5年を経過しない者
ⅶ 風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律26条1項による風俗営業の許可の取り消し処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日または当該処分をしないことを決定するまでの間に許可証を返納」した者で、当該返納の日から5年を経過しない者
ⅷ 風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律26条1項による許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日または当該処分をしないことを決定するまでに合併により消滅した法人または10条1項1号の規定による許可証の返納をした法人の前号の公示の日前60日以内に役員であった者で、当該消滅または返納の日から起算して60日を経過しない者
ⅸ 風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律26条1項の規定による許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日または当該処分をしないことを決定する日までの間に分割により聴聞に係る風俗営業を承継させ、もしくは承継した法人またはこれらの法人の同号の公示の日前60日
ii 以内に役員であった者で、当該分割の日から起算して5年を経過しない者
ⅹ 営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
ⅺ 法人であってその役員のうちにⅰ~ⅸのいずれかに該当する者がいるもの
また、風俗営業を営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所における業務の実施を統括管理するもののうちから、専任の管理者を一人選任しなければなりません。
場所的要件
場所的要件は、風俗営業の許可を受けられる場所かどうかという要件です。
営業しようとする場所の「用途地域」と、一定の範囲内における(半径100m以内)「保護対象施設」の有無を確認します。
用途地域とは、都市計画法で定める地区の定義で、住居・商業・工業などその土地の利用方法について一定の制限をかけています。詳しくは国土交通省のHPで確認できます。
風俗営業許可は、基本的に住居地域では許可されません。
そのため、営業しようとする場所が商業地域または工業地域であることが必要です。
より詳しく言えば、
- 隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地
- その他用途が指定されていない地域
となります。
繁華街であれば、おそらく商業地域になると思われますが、道路を挟んで住居地域になっていたり、敷地が住居地域と商業地域にまたがっている場合には注意する必要があります。
当然わずかでも住居地域にかかっていれば許可されません。
4号のマージャン・パチンコ店や5号のゲームセンターは一定の条件を満たす第2種住居地域や準住居地域でも営業できる場合もあります。
いずれにしても直接役所に足を運んで確認することをおすすめします。
保護対象施設は、学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所(入院設備を有するもの)です。これらの施設から一定の距離を置かなければ、風俗営業許可を得ることはできません。距離制限は、用途地域と施設によって異なります。
営業種別 |
用途地域別 |
保護対象施設別 |
距離制限 |
第1号~第5号 |
近隣商業地域 |
学校(大学を除く) |
100m |
図書館 |
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児童福祉施設(助産施設を除く) |
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大学 |
50m |
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病院(第一種助産施設を含む) |
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診療所(8人以上の患者を入院させる設備を有するものに限る) |
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第二種助産施設 |
20m |
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診療所(7人以下の患者を入院させる設備を有するものに限る) |
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商業地域
|
学校(大学を除く) |
50m |
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図書館 |
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児童福祉施設(助産施設を除く) |
|||
大学 |
20m |
||
病院(第一種助産施設を含む) |
|||
診療所(8人以上の患者を入院させる設備を有するものに限る) |
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第二種助産施設 |
10m |
||
診療所(7人以下の患者を入院させる設備を有するものに限る) |
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その他の地域 |
学校(大学を含む) |
100m |
|
図書館 |
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児童福祉施設 |
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病院 |
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診療所(患者を入院させる設備を有するものに限る) |
※診療所には歯医者さんも含まれます。歯医者さんにも入院設備があるか、確認が必要です。
構造的要件
構造的要件は、店舗の構造や設備が風俗営業の許可を受けれられるかどうかの要件です。
(1)客室(※)の床面積
1号営業 客室の床面積が1室66m²以上で、その内ダンスをさせるための床面積が約5分の1以上あること。
2号営業 客室の床面積が1室16.5m²以上(和室の場合は一室9.5m²以上)あること。(但し、客室の数が一室のみの場合はこれらの数値に満たなくても問題ありません)
3号営業 客室の床面積が1室66m²以上で、その内ダンスをさせるための床面積が約5分の1以上あること。
4号営業 ダンスをさせるための床面積が66m²以上あること。
5号営業 客室の床面積が1室5m²以上あること。
※『客室』とは接待、ダンス、遊技等が行われる客の用に供する区画された場所をいい、営業所から専らその営業に使用する調理室、クローク、廊下、洗面所、従業員の更衣室、カウンターやレジの内側、床の間、ショーステージなど「完全に区画された建物その他の施設」を除いたものをいいます。例えば、室内にカウンターがある場合、カウンターの内側(従業者のいる場所)は含まれません。
(2)客室の内部が、お店の外部から容易に見通せないこと。
※お店に窓があるような場合は、窓にシート等を貼り付けて外部から客室が容易に見えないようにする必要があります。カーテンやブラインド等では実地調査時に不可となりますので、ご注意下さい。
(3)客室に見通しを妨げるような高さ1m以上のつい立や仕切り等がないこと。
(4)善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物等を設けないこと。
(5)客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。(但し、営業所外部に直接通ずる出入口は除く)
(6)客室の明るさ(照度)
1、2、3、5号営業:5ルクス以上。
4号営業:10ルクス以上。
※店内の照度をコントロール出来る『調光器(スライダックス)』については、基本的には調光器を使用し最も暗くなった場合でも5ルクス以上の照度があれば、調光器自体は設置されていても良いはずですが、東京都の場合は取り外すよう指導されます。 ちなみに、5ルクスとはお店のソファもしくはイスに腰掛けた状態で、テーブル上の新聞が読める程度の明るさです。
(7)条例で定める騒音又は振動の数値に満たないようにするための必要な構造又は設備を有すること。
(8)ダンスが出来るような構造又は設備を有しないこと。(2、5号営業のみ)
風俗営業許可についてよくある質問
風俗営業許可についてよくある質問について解説していきます。
- 風俗営業許可を取得すれば深夜営業できる?
- 風俗営業許可にかかる費用は?
- 風俗営業許可にかかる費用は?
風俗営業許可を取得すれば深夜営業できる?
接待をする店を開業するのであれば、風俗営業許可(1号営業)を取る必要があります。
その場合営業時間は午前0時までとなります。それ以降朝まで(午前0時~6時)営業するのであれば、深夜酒類提供飲食店の届出を都道府県公安委員会に提出すればできます。
ただし酒類以外に、主食と認められる食事(ラーメン、牛丼など)を提供している場合には届出の必要はないとされています。
もちろんこの場合にも「接待」はしてはいけません。なぜなら風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により、「接待」を伴う深夜営業が禁止されているからです。ここで「接俟」とは法律上では「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」となっております。
具体的な行為を紹介します。
- 客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為
- 客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくはほめはやす行為又は客と一緒に歌う行為
- 専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、歌舞音曲、ダンス、ショウ等を見せ、又は聞かせる行為
- 客にまたは客とともに、遊戯・ゲ一ム・競技等を行う行為
- 客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為、客の口まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為
同一店舗で風俗営業許可申請と深夜夜酒類提供飲食店営業の届出を同時にすることはできません。
風俗営業許可にかかる費用は?
風俗営業許可申請を取り扱う専門家は行政書士ではありますが、風俗営業許可の実務に精通している行政書士はごく一部にすぎません。
通常の社交飲食店(キャバクラ等)であれば、20万円前後ですが、地域や時代など諸事情によっても異なります。これに許可申請手数料や添付書類の取得費用、通信費用、交通費、消費税等をたしてゆくと、25万円くらいになってしまうでしょうが、料金相場には一定の幅があります。
風俗営業許可に必要な書類は?
風俗営業許可申請の中でもとりわけ件数が多いと思われる1号営業=社交飲食店を個人で申請する場合の必要書類を例として紹介します。
ちなみに、社交飲食店とは接待行為を伴う飲食店のことで、具体的にはキャバクラ・ラウンジ・ホストクラブのようなお店です。
風俗営業許可1号で必要となる書類は、以下のようになります。
- 風俗営業許可申請書
- 誓約書
- 営業所の平面図面及び営業所の周辺の図面
- 住民票
- 身分証明書
- 成年後見登記の「登記をされていないことの証明書」
- 写真
- 契約関係書類
- 定款・登記事項証明書(法人の場合)
- 保健所の営業許可書
風俗営業許可条件まとめ
風俗営業許可の取得は、書類を提出してから警察による審査がはじまるため、審査期間も含めて、許可取得までには約2ヶ月かかります。
準備期間も含めて、余裕をもって開店前3ヶ月ほどはみておきたいところ。店舗が完成しても、許可が下りずに営業ができないということにならないようにしましょう。
スタッフもお客さまも安心して楽しめる店舗づくりには、ルールに則った営業が不可欠です。気持ちよくお店をスタートさせるために、事前の準備から計画的に進めましょう。