飲食店で「接待」とみなされるのはどこからか

 

最近は新型コロナウイルスによる影響で、営業自粛や時間短縮営業を求められるお店が増えています。
このような状況下で、メディアの報道では「接待を伴う飲食店」がクラスターの発生リスクの高い施設とされてきました。
しかし、「接待」という言葉は少しあいまいな表現であるため、誤解している方も少なくありません。

 

ビジネスの「接待」と風営法の「接待」は違う

 

接待という言葉を辞書で調べると、お客様をもてなすこと・ビジネス面で得意先の方を飲食店などでおもてなしすることなどと解説されます。
しかし、風営法で定められている「接待を伴う飲食店」という場合の「接待」は、辞書本来の意味とは異なりしっかりと定義づけがなされている点に注意が必要です。
風営法上の「接待」をする店員がいるお店やお客さんの射幸心をあおるゲームをさせる施設、風営法の基準により店内の照明が暗く客席に仕切りがあり、周りから見なくなっている「カップル喫茶」などは飲食店ではありますが、風営法の管理下に置かれることになります。

 

お客さんとゲームをする場合も「接待」に

 

注意すべきは、風営法上の「接待」の解釈が幅広い範囲を含んでいる点です。
とくに本来の「接待」と意味が異なるのは、店員がお客さんとダーツや麻雀といったゲームをする場合も「接待」に該当してしまうところです。
具体的には、メイドカフェでドリンクやフードを注文すると、メイドさんと一緒にゲームを楽しめるといった行為が含まれます。
ダーツバーでダーツの上手な店員がお客さんの相手をするようなサービスも、風営法では「接待」とみなされる可能性があります。
一方で、ゲームの道具をお客さんに貸し出したり、ゲームの準備を整えたりといった行動は通常の店員の仕事とみなされるので、「接待」にはあたりません。
お客さんとおしゃべりをする場合も同様です。
注文を聞くときに発生するお客さんと会話や、お客さんにおすすめのメニューを教えたりする行為も、「接待」にはあたりません。
お客さんと軽い世間話をする・お客さんのコートや荷物を預かるといったサービスも「接待」ではなく、通常の店員のサービス行為です。
ただし、特定のお客さんや特定のメニューを注文した方とだけ店員がおしゃべりをするといったサービスは、「接待」に該当します。

 

新型コロナの支援金も風営法の届け出が大きな線引きに

 

新型コロナウイルスの休業補償の対象となる「接待を伴う飲食店」に該当するかも、風営法上の届け出があるかどうかが大きな線引きになりました。
お客さんにお酒を提供するスナックでも、ママがお客さんと軽い会話をして、カラオケ設備を用意している程度のお店の場合、ただの「飲食店」として営業しているところもあります。
もちろん、店員の女性がお客さんのすぐ隣にいてお酌をしたりたばこに火をつけたりといったサービスをする場合は、明らかに「接待を伴う飲食店」なので無許可の風俗店営業となってしまいます。
しかし、カウンター越しにママがお酒を出す「スナック」のような業態は、これを明確に「接待を伴う飲食店」として摘発することはできません。
そういったお店は休業しても補償の対象にならず、オーナーの方がどうしてよいのかわからないというニュースも報じられています。